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2006年3月15日 (水)

『白夜行』を文庫で読んでみて

今話題のTBSのドラマ『白夜行』の文庫を先ほど読み終わりました。

ドラマの方は、殆ど観ていないのですがホームページや職場の人の話から掻い摘んで聞いていたので大筋の話は文庫を読む前から把握していました。

と言うよりも大筋の話を聞いてそのストーリー展開に興味が沸き文庫を読んでみようと思ったと言うのが正しいのかもしれません。

東野圭吾氏の作品を読むのは初めてだったのですが、この作品を観る限り彼は天才だと思いました。

東野ワールド?と言うこの独特の世界に引き込まれ、あっという間に読破してしまいました。

ここからは本題でドラマの内容に関してツラッ~と書いていきます。

私の知る限りでのドラマの展開は初回の2時間枠で主人公の男が瀕死の重傷を負っているのを見て何も言わずに立ち去る女のバックシーンから始まり、この男女の幼少期に起きた数々の事件について、いわゆるこの物語の根っこの部分を描いています。

男は父殺し、女は母殺しと言う重い十字架を背負いながら、この時11歳の男女は今後生きていく為にある約束をかわします。

それは、『もう二度と会わないようにしよう!』だけど・・・

『たとえ会わなくても、手を握らなくても2人は運命共同体だよ』・・・と

しかし2人の過去を知ろうとするある人物が現れ2人は再開する運命になる。

その人物とは武田鉄矢扮する笹垣と言う刑事で、彼は過去にこだわり昔起きた事件の真相を探るため彼らを追いつめて行きます。

二話以降の展開は、出会った2人が昔の事件を闇に葬るためと、保身のために次々と犯罪を犯していきます。

そして・・・

ドラマはまだ完結していませんが、冒頭のシーンによって悲しい結末が待っていると予想できます。

またこのドラマは主人公の幼少時代から現在までの男女の関わり合いや心情(犯罪者ゆえの不安や苦悩)を描き、それが物語の根幹となっています。

なのでドラマを見る限りは在り来たりの内容だと思います。

だが

小説を読むと全然違ったアプローチでストーリーが展開して行きます。

小説ではドラマで冒頭に描かれていた幼少期のシーンは、この事件を数十年に渡って追い続けてきた笹垣と言う刑事の空想の産物であって、決して真実として描かれてません。

事実としてあるのは、ある男の他殺死体が建築中のビルで発見され、容疑者として数名の名前が挙がり、その中の1人の女性がガス自殺しこの事件は迷宮入りとなった事です。

その後、ドラマ同様主人公である男女が別々に中学、高校と様々な人と関わりを持って成長していく過程が描かれていますが決定的に違うところがいくつかあります。

決定的に違う箇所とは、小説では上記の過程が主人公の心境や心理を描かずにストーリー進行しているところで、この描写手法が小説に凄みを与えているのです。


例を挙げると・・・

まず車内のAさんが登場し、彼は仕事が忙しく普段から寝不足なので車内でもうたた寝をしていましたが、ふと起きて横を見るとゴツイ男がスポーツ新聞を見ており、ある記事を見て驚愕の表情を浮かべているのを発見します。
彼が見ていたのは新作映画の予定欄だったので、華麗にスルーして疲れをとるために再度寝る事にしました。

次の登場人物は映画館のチケットを売っている人で、ある男がチケットを買うのにどの映画を観るか迷っている様を見てイライラします。
やっと映画を決めたのでどの座席がよいか聞いたところ、めったに人が座らない一番前の端の席を指定されたので変わった人だなぁ~と思いました。

次は映画館の観客が登場!
彼はこの映画を楽しみにしていたのですが、前の方で館内を出たり入ったりする客がいて映画に集中できず憤慨します。

次の登場人物は久しぶりの休みで、駅前に飯を食べにやって来て懐かしい友人に出会います。
彼はその男を見て以前よりも太ったなぁ~と思いました。
話が弾み『今は何をやっているの?』と聞くと、彼は『ベンチャー企業を設立した』と答えてました。
それを聞いた彼は相手に対して嫉妬し、羨みました。

って感じの描写をしています。

これが主人公の主観だと以下のようになります。

映画館に行こうと思って電車に乗ったんだけど、スポーツ新聞で目当ての映画の公開日時を確認すると・・・

ガーン! まだ公開していません。

まぁとりあえず映画館まで行ったのですがどの映画も興味をそそられなかったのでチケット売り場で迷ってしまいながらも観る映画を決定!

迷わずお気に入りの最前列の端の席を指定して映画を観ることにしました。

しかし下痢気味で途中何度も映画館から席を外し、トイレに駆け込まなければなりませんでした。

映画を観終えて帰宅すると、途中で懐かしい友人に出会いました。

久しぶりに会った彼は昔と変わらず饒舌で、色々まくし立てて聞いてきたのですが、リストラされ失業中の私にとって一番聞いて欲しくなかった仕事に関しても聞かれたので『ベンチャー企業を設立した』と嘘をついてしまいました。

以上のような内容になります。

小説のような表現でストーリーを進行させて尚且つ辻褄を合わせていくのは至難の技です。

だがこの小説は見事に辻褄を合わせておりストーリーが展開しているのです。

凄いのはそれだけではありません!

なんと小説では主人公の男女の会話は1つもありません。

しかもお互いが出会っている描写もありません!

各々が別々の事件に遭遇し、各々のエピソードは完全に孤立しているのです。

しかし読み進んでいくうちに二人の奇妙な共生関係が徐々に浮かび上がってきて孤立していたエピソードが繋がりを見せていくのです。

しかも全てを読み終えてもう一度ストーリーを反芻すると、すべてのエピソードが隙間なく組み合わされていることに気付きます。

そしてこの『白夜行』と表題がどれだけ悲しく深い意味を持っているか分かると思います。

しかし主人公の2人の気持ち

例えば

『彼らは何を思い犯行を繰り返していたか?』

『お互いが相手のことをどの様に考えていたか?』

などの描写が一切無いので解釈の仕方は千差万別あり、そのことがこの小説をより深みのあるものにしています。

例えば十年前くらいに大ブレイクしたエヴァンゲリオンも解釈の仕方が千差万別あると言う意味では、その類だと思います。

今放映しているドラマはこの小説をドラマ監督なり演出家なりが独自に解釈して映像化しているん物だと感じました。

ドラマは全てを見ていないのでお薦め出来ませんが文庫はかなりの内容だと思います。

時間があれば是非見てください。

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コメント

まんまと読みたくなりましたw
当直の時にでも読もうかしら

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